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掌編小説を掲載しています。
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探偵とぼく
「何故世の中の蒙昧たる愚民どもは俺の偉大なる才能に気づかないのかっ……!」
 ソファーに腰掛けた木田が、忌々しそうに呻いた。一体何度目か、数えるのも面倒だ。
「木田、探偵やめなよ」
 ぼくな何度と無く言ってきた忠告を、友人にもう一度告げた。
「貴様の分際で何を言う! 探偵は浪漫だ! 怜悧さと聡明な推理力、すかした台詞……全て俺に当てはまるだろう! 言わば俺の天職だ」
「……って言っても開店閉業中みたいなものだし、犬猫探しだの、浮気の調査しかしてないじゃん」
「ふふん、甘いな。だから貴様は俺の足元にも及ばぬのだ。俺の爪の垢を全身煎じて飲むと良い。今の仕事は……その、将来への布石、投資である! 日々業務に勤しむことによって、素敵で可憐な事件が俺の元へ舞い込んでくるのだ!」
「今の仕事……」辺りで歯切れが悪くなったのは気のせいではないだろう。本人も苦虫を噛み潰したような表情をしている。
 こんな具合にぼくと自称スーパー探偵木田の日常は、何の変化も無く連続される。
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